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身体拘束最小化のための指針

1.身体拘束最小化に関する基本的な考え方
 身体拘束は、患者さんの自由を制限することであり、尊厳ある生活を阻むものです。
当院では、患者さんの尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが拘束による身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識をもち、緊急・やむを得ない場合を除き身体拘束をしない診療・看護の提供に努めます。
1)身体拘束の定義
 「抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、 その運動を抑制する行動の制限を言う」
2)身体拘束等禁止の対象になる具体的な行為
 厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き」(2024年5月)の中であげている行為を下に示します。
1.徘徊しないように、車いすや椅子・ベッドに体幹や四肢をひも等でしばる。
2.転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等でしばる。
3.自分で降りられないように、ベッドを4点柵で囲み柵をすべてひも等でしばる。
4.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等でしばる。
5.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
6.車いす・椅子からずり落ちたり立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
7.立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
8.脱衣やオムツ外しを制限する為に、介護衣(つなぎ服)を着せる。
9.他人への迷惑行為を防ぐ為に、ベッド等に体幹や四肢をひも等でしばる。
10.行動を落ち着かせる為に、向精神薬を過剰に服用させる。
11.自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する。
3)身体拘束禁止の対象とはしない具体的な行為
1. 自力座位を保持できない場合の車いすベルト
 *肢体不自由や体幹機能障害があり残存機能を活かすことができるよう、安定した体位を保持するための工夫として実施する行為については、その行為を行わないことがかえって危険と判断するため。
2. 整形外科疾患の治療であるシーネ固定等
3. 身体拘束をせずに患者を転倒や離院などからのリスクから守る事故防止対策(離床センサー等)
 *行動の制限や抑制を目的とするものではなく、患者の行動をいち早く把握し、患者のニーズを満たすようなケアにつなげるためのものであるため
●当院において想定される拘束
 ミトン着用、つなぎ服着用、4 点柵使用、車いす用安全ベルト使用など

2.緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合の対応
1)緊急・やむを得ない場合の 3 要件
身体拘束は行わないことが原則ではあるが、患者の生命または身体を保護するための措置とし て、身体拘束による心身の損害よりも、拘束をしないリスクのほうが高い場合で、「切迫性」 「非代替性」「一時性」の3要件をすべて満たし、緊急やむを得ないと認められた場合に のみ、本人・家族への説明、同意を得たうえで行うことができる。
また、身体拘束を行った場合は、その状況についての記録の整備を行いできるだけ早期に 拘束を解除するよう努力する。
1.切迫性:患者さん又は他の患者さんの生命又は身体を危険にさらさないこと。
2.非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替法がないこと。
3.一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。
身体拘束を行う場合は、当院の身体拘束マニュアルに準ずる。
2)緊急やむを得ない場合に該当するか検討を必要とされる患者の状態・背景
(1)基本的に他職種間で協議する
①気管切開・気管内挿管チューブ・中心静脈カテーテル・経管栄養チューブ・膀胱留置カテーテ ル・各種ドレーン等を抜去することで、患者自身に生命の危機および治療上著しい不利益が 生じる場合
②精神運動興奮 (意識障害、認知障害、見当識障害、薬物依存、せん妄など)による多動・不穏 が強度であり、治療に協力が得られない、自傷・他傷など害を及ぼす危険性が高い場合
③ベッド・車椅子からの転倒・転落の危険性が著しく高い場合
④検査・手術・治療で抑制が必要な場合
⑤その他の危険行為(自殺・離院・離棟の危険性など)
以上いずれかの状態であり、かつ上記の3要件をすべて満たすもの
3)その他の日常ケアにおける基本方針
①患者の療養内容を把握し、患者主体の行動、尊厳ある生活に努める。
②言葉や対応等で患者の精神的な自由を妨げないように努める。
③患者・ご家族の想い・意向を他職種で情報共有し対応する。
④本人の安全確保を優先する場合には、安易な対応でないか、常に振り返りながら十分な検討を 行う。
⑤拘束等を回避することで生じる可能性に対しても、事故の起きない環境整備と柔軟な応援体制 の確保に努める。
4)向精神薬等薬剤使用上のルール
薬剤による行動制限は身体拘束には該当しないが、患者・家族等に説明を行い、同意を得て 使用する。
①不眠時や不穏時の薬剤指示については、医師・看護師、必要時には薬剤師と協議し、対応 する。
②行動を落ち着かせるために向精神薬等を使用する場合は、医師・看護師等で協議を行い、 患者に不利益が生じない量を使用する。また、薬剤の必要性と効果を評価し、必要な深度 を超えないよう適正量の薬剤使用を検討する。

3.身体拘束最小化のための組織体制
1)「身体拘束最小化チーム」の設置
(1)設置
 身体拘束の最小化を推進することを目的として、身体拘束最小化チーム(以下、「チーム」という。) を設置する。
(2)身体拘束最小化チームの構成員
 副院長(委員長)・医療安全管理者・リスクマネージャー(各部署より)・看護部長
(3)開催と役割
 チームとしての会議は毎月1回開催し、次のことを検討、協議する。
必要に応じて臨時会議を開催する。臨時開催の実施権限は委員全員にある
1) 身体拘束の実施状況を把握し、管理者を含む従業員に定期的に周知徹底する。
2) 身体拘束実施事例の最小化に向けた医療・ケアを検討する。
3) 定期的に本指針・マニュアルを見直し、従業員へ周知して活用する。
4) 身体拘束最小化のための従業員研修を開催し、記録する。

4.身体拘束廃止、改善のための職員教育
 すべての職員に対して、身体拘束禁止と人権を尊重したケアの励行を図るために職員教育を行う
 ① 全職員対象とした身体拘束に関する教育研修を定期開催する(年1回)
 ② 新規採用者には、入職時に研修を実施する。
 ③ その他、状況に応じ必要な教育・研修を実施する。
記録および周知
 検討内容及び結果については、議事録を作成し保管するほか、議事録をもって職員へ周知を行う

5.この指針の閲覧について
 当施設での身体拘束最小化のための指針は当院マニュアルに綴り、職員が閲覧可能とするほか当院のホームページに掲載し、いつでも患者・家族等が閲覧できるようにします。

令和6年5月24日制定
令和6年11月改定